閉鎖的競争入札(CCB)
閉鎖的競争入札は、買主様が招待した候補先のみが応札可能な非公開の入札です。相対の交渉に比べて提示条件が改善するのが常で、時に劇的な差が生じます。売主様には必ずご検討いただきたい選択肢です。
相対交渉と競争入札
売主様が「最も良い条件を提示した買手候補に売りたい」とお考えになるのは当然のことです。それを一対一の交渉を繰り返すことで達成するか、一対多の競争状態を作って達成するか、どちらが得策でしょうか。
相対か競争か
説明
右の図は、過去お手伝いした印象深い2例です。どちらのお客様もまず相対で買手をお探しになり、いくつか受けた提示価格のうち最高額が左の数字(青)でした。それに納得いかず弊社にお声掛けいただいて競争入札を行った結果、最高の応札額は右の数字(赤)となりました。
もちろん、これらの差の全てが競争の成果、とは必ずしも言えません。
- 関心の高い候補を見付け出すこと
- 会社の魅力を説得力ある資料で説明すること
- 買手候補は条件を小出しにして妥結点を探る戦術を取れない
- 競り勝つためにプレミアムの上乗せ
競争入札は価格の高騰を招いてその後の事業運営に悪影響を及ぼしかねない、との意見を稀に見掛けますが、弊社の経験上その様な事態は一切起きていません。図の2例でも、価格は会社の収益力に対して常識的な範囲内でした。むしろ
- 競争入札は適正価格での譲渡を実現するための手法
入札方式の手順
説明
標準的な入札の手順は、
- 複数の候補先と接触して入札への招待可否を判断する
- 状況に応じた入札要綱を作成して候補先に案内する
- 情報開示を行って複数候補先からの多量の質問に対応する
- 入札期日に候補先からの意向表明書を詳細に比較検討する
- 次ステップへの招待先を売主様と決定する
応札する候補先には人的・金銭的なコストが発生しますので、売主側に対して緻密かつ公平な対応と透明な選定プロセスを要求します。次のステップに進めなかった候補者から納得を得られなければ、しこりを残す可能性もあります。
ただしそれら手続にかかる手間の大半はお手伝いするFAが負担することであり、腕の見せ所でもあります。競争入札の手法はFAにとって負荷の大きな作業ですが、
- 売主様にとっては、相対交渉と比べて追加的な負担は発生しません。
強いてデメリットを挙げるとすれば、継続的に買収を行う買主様の中には「参加者の多い入札には参加しない」とのポリシーをお持ちの先がいらっしゃることでしょうか。多数の買手候補が見込まれる状況でそういったポリシーをお持ちの買主様と敢えて交渉なさりたい、というケースは稀ですが、その際は慎重なプロセス設計が必要です。
閉鎖的競争入札(CCB)
M&Aで行われる入札は、美術品のオークションや不動産の競売とは異なり、売主様が招待した候補のみが応札可能な形態を採ります。機密保持が重要なM&Aでは標準的な方法で、閉鎖的競争入札(Closed Competitive Bidding)と呼ばれます。M&Aに関して「ビッド」「オークション」「コンペ」の語が出たら同じ意味です。本サイトでは、"CCB"の略称で記載しています。
CCBはFAが行う
説明
その理由は、CCBが
- 売主様にとって最も良い条件を獲得しようとする行為
- 複数の買主様候補を競わせる仕組
FAは、CCBを当初から織り込んでプロセスを設計し、それに沿ったスケジュールで動きます。買主様側のFAとして選任いただいた場合も、売主様がCCBを行ってくる前提で対策を練ります。FAにとってCCBは基本工程として組み込まれたステップです。
CCBの良さ
説明
売主様にとってCCBの最大の良さは条件改善効果ですが、他にも良さがあります。
ひとつは、
- 「この相手でよいか」の不安が軽減する
もうひとつは
- 時間の節約
買主様にとってCCBのメリットはなく、できればCCBとなる前に相対の独占交渉に持ち込むことが最善です。ただし魅力的な会社/事業であるほどCCBが行われる傾向にあり、避けて通れないのが現状です。CCBを開催する側も熟知したFAは、買主様のお役に立てるはずです。
CCBの費用
説明
売主様の会社/事業の内容や置かれた状況は多種多様であり、それに合わせて売却プロセスも異なりますから、FAや仲介会社の報酬計算の基準も一様ではありません。弊社の報酬についても、個々のケースに応じてご提案しています。なので厳密な対比はできませんが、少なくとも現在のマーケットでCCBがコスト高を招いたという事例を聞いたことはありません。
コストは変わらない、価格の期待値は上がる、そんなうまい話があるか、と疑念を持たれる売主様もいらっしゃるでしょう。しかし、ごく普通に行われている方式です。冒頭で「必ずご検討いただきたい選択肢」と書いた理由はここにあります。