企業価値の本質
価格で折り合わなければ、M&Aは前に進みません。売主様の希望額と買主様の評価額が大きく乖離するとき、金額の裏打ちとして理にかなう計算があれば、無用なすれ違いは防げるはずです。
企業価値シミュレーター
何はともあれ大雑把に企業価値や株主資本価値を知りたいという方は、こちらで試算結果をご確認いただけます。初期的な参考値としてはお使いいただけるものですが、試算の域を出ません。そのまま正式なご検討の材料としてお使いになるのは危険ですので、必ず専門家とご協議ください。
- 入力いただいたデータは価値計算の際にサーバーに送信され一時的に記憶されますが、本ページが閉じられた際に消去され、弊社が保管すること及び自己目的で利用することはありません。
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企業価値
「企業価値」は文字通り企業の価値のことですが、この抽象的にも使える言葉を輪郭が曖昧なままにしておくのはすれ違いの元です。企業価値の細部には踏み込まず、本質的な部分だけご案内します。
まとめ
2.企業価値は、経営資源をどの様に運用したかの観点からは事業価値(EV)と非事業価値に分けられます。企業価値の分配にあずかる権利の観点からは、資金調達の方法に応じて他人資本価値と株主資本価値とに分かれます。
3.運用と調達の対応関係に着目すると、企業価値評価は貸借対照表の再評価と捉えることができます。この考え方によって企業価値評価のプロセスを通常の経理と容易に関連付けることができます(貸借対照表とは違うのか)。
4.どの様な目的/前提で企業価値を測定するかによって、採用するキャッシュフローは異なります。これは、どの様な時価を得たいのか、という問題でもあります。
5.事業が継続される前提であり、売主様と買主様とが通常の交渉プロセスに沿ってM&Aを行うための評価であれば、フリーキャッシュフロー(FCF)を使い、資本資産価格モデル(CAPM)に基づき算出された割引現在価値の合計をEVとする計算が標準的です。
6.FCFはEVを決定する重要な要素ですが、営業と投資が嚙み合ってFCFが中長期的な成長を示した結果EVが増加するのであって、EVを増加させるために目先のFCFを増やそうとするのは本末転倒です(フリーキャッシュフロー)。
7.もう一つの重要な要素である割引率は事業リスクに見合った要求利回りで、その相場を共有することは売主様・買主様間の無用なすれ違いを回避するために重要です。
8.CAPMは実務上長きにわたり広く採用されている理論である一方批判も多く、絶対的なものではありません。企業価値評価に際しては様々な評価手法を検討し、偏らないスタンスを取るのが得策です。
企業価値の定義
- 経営資源の価値をキャッシュフローで測ったものが企業価値
貸借対照表とは違うのか
- B/Sを将来キャッシュフローで再評価したものが企業価値
時価
- M&Aで売主様と買主様の合意した価格は上記①
- 売主様・買主様それぞれが検討段階で参考にする評価額は上記②
- 売主様・買主様が制度上の必要に応じて算定する公正価値は上記③
- 第三者に売却する(売主様、売却前提の買主様)
- 株式公開後に市場売却する(株式公開前提の売主様・買主様)
- 継続保有する(長期保有前提の買主様)
- 資産を中古相場で売却する(清算前提の売主様・買主様)
- 企業価値評価において評価目的と価値の実現方法が重要
事業価値(Enterprise Value; EV)
- 売主様または買主様の内部で売買価格を検討するために計算する
- M&A後も事業は長期的に継続される
- 流動資産
- 固定資産
- 流動負債
- 流動資産・固定資産・流動負債を将来CFベースで再評価したものがEV
フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow; FCF)
- 流動資産、固定資産と流動負債が回転して生まれた営業利益から税金見合い額を控除してしまい
- キャッシュが流出しないのに営業利益の計算時には控除されていた費用を加え戻し
- 発生した設備投資額や子会社取得額は差し引き
- 運転資本(≒売掛金と買掛金の差額)の増/減額を減/増して滞留キャッシュの変化を反映した
- 他人資本(=借入金)債権者にも株主にも自由に分配可能な額なのでフリーキャッシュフロー(FCF)
- 営業と投資が嚙み合ってFCFが中長期的な成長を示した結果EVが増加する
割引率
- 割引率は要求利回り
- 株式時価総額が小さい場合はサイズプレミアム
- 非公開企業であれば流動性リスクプレミアム
- 非公開企業の株主資本コストは最低でも20%内外
様々な評価手法
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
- コストアプローチ
- 株主にだけ帰属するFCFE(Free Cash Flow to Equity。あるいはEquity Cash Flow; ECF)と呼ばれるキャッシュフローを株主資本コストで割り引いて株主資本価値を評価する方法
- キャッシュフローではなく配当金を株主資本コストで割り引いて株主資本価値を評価する方法
- この対応関係が失われると、求めた価値は意味を失います。
企業価値計算の基礎ブロック
企業価値の計算過程は様々な基礎ブロックの積み重ねで構成されています。その基礎ブロックも厳密に理解しようとすると相当な労力を要しますので、実務上必要な範囲に限定してご紹介します。
キャッシュフロー
- 現金とは、手許現金及び要求払預金をいう。
- 現金同等物とは、容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資をいう。 [1998.3.13 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第二-一]
割引現在価値
資本資産価格モデル(Captal Asset Pricing Model; CAPM)
- $r_e$:株主資本コスト
- $r_M$:株式市場ポートフォリオの期待利回り
- $r_f$:無リスク金利
- $\beta$:株式ベータ
加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital; WACC)
- $t$:実効税率
- $r_d$:他人資本に対する要求利回り
- $D$:他人資本時価
- $r_e$:株主資本に対する要求利回り
- $E$:株主資本時価
倍率法
- 営業利益
- 非資金性費用(減価償却費等)
- EBITDA
非事業資産
正味有利子負債(ネットデット; Net debt)
- 控除するキャッシュの範囲
- 加重平均資本コスト(WACC)計算に使用する際の影響
- 現預金を事業運営上の必要額と余剰現預金とに分ける